活動内容

第43回研究発表会(12.9.30)

 第43回研究発表会(12.9.30)

◆日 時:平成24年8月25日午後1時15分~午後4時
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
◆研究発表:1.『おもてなしのその先へ』眞鍋清嗣 氏
        2.『祇園祭のタペストリー』都草会員 住 邦夫
◆参加人数:23名
◆参加費 :500円   一般参加費 :700円
 
 第1部の研究発表会はサントリーパブリシティサービス(株)代表取締役社長 眞鍋清嗣氏です。眞鍋さんは深沢誠理事の学生時代からのご友人です。SPS(会社)は接客をビジネスとしている会社で、今年の5月に活動風景がテレビ取材され、ワールドビジネスサテライトの番組の中で大きく取り上げられました。東京スカイツリー ソラマチタウン・東京オペラシティーコンサートホール・新国立劇場他多くの商業施設でお客様をもてなす接客のプロ集団です。注目の商業施設の多くにはSPSのスタッフが派遣されております。
 

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 サントリーは今から50年前に日本で最初に工場見学を始めた企業でした。ただ製造工程を見せるだけでなくお客様の立場になりお伝えすることで信頼関係を築き、サントリーファンを育成していくことが目的でした。こうした多くのノウハウが生かされ文化施設や商業施設に進出するようになりました。「お客様は期待を上回った時こそ満足してくれる」を念頭に置いた接客のトレーニングを行っております。お客様の質問に答えるだけでなく何を必要としているかを引き出し、気付いていない利用法をアドバイスすることが重要で「これは如何ですか」というマニュアルにはないお客様にあった提案能力が必要になってきました。テレビで大きく取り上げて戴いてから多くの問い合わせもあり数日後には、日経新聞での取材も予定しております。我々は産業観光の先駆けとして50年程前よりスタートしてきました。
 

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 26年前に完成したサントリーのコンサートホールは、世界で5本の指に入る評価をされております。当時世界のコンサートホールを見て回り音楽や建築の勉強をして、日本独自のサービスの現場に立つスタッフを作りあげていったという事です。今では全国のクラシックホールの大半をSPSが請け負っています。他には全国で17か所の公共施設の運営も行っています。近年では各地の商業施設にも参入しています。大阪ステーションシティーや東京スカイツリーのあるソラマチシティーでのインフォメーションの仕事も行っております。ソラマチシティーで1日平均2万件のサービスの中でクレームが全く無いという対応をしており、SPSのサービスはこの10年で急激な成長をいたしました。サービスの特徴は自分たちの言葉で作り上げた「OUR CREDO(サービス憲章)」で3つのモットーと18のスタンダードです。スタッフは常にOUR CREDOを身に付け迷った時に読み返し自分の行いを問うことに役立てています。
 

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 3つのモットーは「私たちはプロフェショナルとしての誇りを持っています・笑顔の力を知っています・サービスの答えがひとつではないことを知っています」です。各自がマニュアルサービスにはない答えを考えてお客様にあった対応を心がけましょう、をうたったものです。お客さまからのお褒めの言葉やお叱りの情報は皆で共有し後の活動に役立てています。お客様の声は指摘情報として取り上げ、より良い解決方法を考えサービスの向上に取り組むようにしています。ホスピタリティーと心ゆたかな社会の実現を目指し文化振興のメディエイターになれるよう一層の努力をしています。
 
 私達都草でも様々な人とふれあうガイド等のおもてなし社会貢献活動を行う上で刺激になる講演でした。台風が近づく悪天候の中、貴重なお話をありがとうございました。
 

 
 第2部は会員の住さんで祇園祭りのタペストリーについてです。祇園祭は装飾布のお祭りでもあります。京都には西陣があります。鉾には4種類の水引と鉾の顔である前掛け・胴掛け・車輪の横にあるのが裾幕と呼ばれ一番安価な装飾布が掛けられています。鉾の後ろ側を見送りとよび鉾の大画面として重要な部分になり高価な織物が掛けられます。見送りの下に後掛けがあります。宵山の時は見送りを掛けていないので後掛けがしっかりと見ることができます。水引の中では下の水引に豪華な織物が飾られます。装飾布の種類は数多くありますが代表的なものとしては、西陣などで作られる綴(つづれ)・錦(にしき)・刺繍と渡来品の緞通・タペストリーの5つが上げられます。
 

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 綴織は世界中に古代からある織物で、横糸を途中で折り返す特徴があります。絵を書くように織る綴は現代も手作業で作られています。錦は帯や能衣装などを、ジャガード装置のついた手機を使い織ります。刺繍は基布に色糸を刺していきます。よく似ているもので刺青(入れ墨)があり、どちらも針を使うところが共通です。緞通はとても高価な絨毯です。ウールや絹が使われペルシャ・トルコ製が最高級品とされております。壁に掛けるタペストリーは厚地織物でハサミでは切ることができません。情景を絵のように描き素材はウールを使いベルギーで作られたものが最高級品でしたが、後にパリのゴブラン工房のものが有名になり「ゴブラン織」がタペストリーの異称となっています。山鉾にはこれらが掛けられていますが一種類だけではなく新しい物を買い足し何枚も持っています。新しい織物は巡行に掛けられ宵山に古い織物が掛けられるケースが多いです。多くの山鉾の中で重文指定されている鯉山のタペストリーは江戸時代に買われました。
 

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 このタペストリーをノミで9分割して山に掛けています。この織物にはベルギー・ブリュッセルで作られたBBというマークが付いております。ベルギー王立アカデミーの見解によるとホメロスが書いた叙事詩「イリアス」の一場面を表しているとのことでした。ルネッサンスの頃、鳥占いが盛んで左から右に飛んでいる姿は吉兆(戦争に勝てる)と呼ばれていました。ヨーロッパでの古典の典型であるイリアス伝説についてかなりの知識を持っていた者によって作られたタペストリーです。霰天神山のタペストリーも江戸時代中頃に購入されました。しかし鯉山のように1枚全てではなく、下辺の淵部分のみの購入です。それを10分割して組み立て直し前掛けの寸法に合わし掛けられています。海底界を表した横長の絵をパズルのように組み合し意味のある長方形の絵に再現されています。もちろん繋ぎ目はわからないので1枚の絵に見えます。イリアス伝説はギリシャ神話の中のかなりのウエイトを占めています。
 

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 イリアス伝説というのはギリシャとトルコの10年間も続いた戦争の話が叙事詩に書かれています。作者は盲目のホメロスといわれ2800年前にまるで見てきたかのように書かれていまが、実はホメロスの時代はまだ文字がなく、後世に文書化されるまでは口承されていました。古代人と現代人との最大の違いは暗記力のようです。イリアス・タペストリーが作られたのは16世紀後半です。多くのイエズス会の宣教師はキリシタン大名である蒲生氏郷を頼りにし、5枚のタペストリーを贈りました。5枚の内の2枚が徳川家に献上されその内の1枚が加賀前田家に現在もあります。残りの3枚が会津天寧寺から京都天寧寺を経由し各山鉾町に売られました。
 
 以上のお話から来年の祇園祭が今から楽しみになってきました。ありがとうございました。
 
 
(事務局 岸本幸子)

 

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