旧議場土曜講座 12月は「東寺のあれこれ話・不思議」(2022.12.17)
旧議場土曜講座 12月は「東寺のあれこれ話・不思議」(2022.12.17)
旧議場土曜講座 12月は、俊藤靖会員による「東寺のあれこれ話・不思議」。
俊藤会員は長年東寺のガイドを務めるなど、都草の中でも東寺のスペシャリストとしてよく知られた方です。
12月17日、今年最後の土曜講座に「東寺のあれこれ話・不思議」と題してお話させていただきました。
由緒ある旧議場で大変貴重な体験をさせていただき、感謝しています。
お話した中で、東寺の七不思議の一つ「猫の曲がり」ついて私の考えを述べたいと思います。
「猫の曲がり」には、昭和初期までは婚礼や大切な儀式の時には通らない風習があったと言うことです。
「猫の曲がり」とは東寺の東南(巽)、五重塔のある角、大宮通と九条通が交差する所です。ある本には『五重塔がある東寺東南の角あたりを地元の人は“猫の曲がり”と呼んで不浄の地とされていたそうです。昭和になってからも、嫁入り行列等はここを避けて通る慣わしになっていたようです。
小さな生き物にも憐みをかけるお寺ということもあってか、猫が陽当たりのよい東南の角に住み着き、それらの影響の為か汚れた感じとなり猫や他の生き物が死んでいたりしてか、いつしか不浄の地と言われるようになったのでしょう』とあります。
猫が住み着き不浄の地。明治期のハガキなどを見ると木々が鬱蒼と茂り、そんな感じもするのですが疑問でした。
ある時『都名所図会』の東寺の記述の中に「猫瓦〔巽の方の築地の上にあり。此築地造営の時は梶原景時奉行すといひ伝へ侍る〕」の記述に気づきました。『都名所図会』は安永9年(1780)刊行なので、その頃から猫瓦と呼ばれる瓦が東南の築地に葺かれていて、その角を「猫の曲がり」と言ったと思われます。
洛中洛外図屏風の池田本には、荷馬車が行きかい、人々が天秤棒を担いで通る様子が賑やかに描かれています。九条通の南側には、御土居が築かれていて、大宮通から先、南に行くには、「猫の曲がり」から九条通を西に、千本通りを南下して淀などに向かうのがメインルートであったことが絵図で伺われます。
現在の「猫の曲がり」は、1号線が通り大型トラックがひっきりなしに通る所です。江戸時代、東洞院通が渋滞の為、日本で最初の一方通行(北行き)になったこと等を考えると、同様に、荷馬車の通行が多く騒がしい、渋滞や事故の危険がある「猫の曲がり」を婚礼や大切な儀式などの時、通ることが憚られたのではと私は考えています。
東寺には、他にも「東寺泥」の授与とか、「慶賀門の盃状穴」など詳しく調べてみたい興味深い不思議が存在します。(会員 俊藤靖)
旧議場土曜講座
(広報 須田信夫)
(写真 須田信夫)