旧議場土曜講座 10月は「絵画で見る京の時代変遷」(2023.10.21)
10月は「絵画で見る京の時代変遷」、野津隆会員が講師を務めました。
私は学生時代からやまと絵(絵巻物や障壁画・屏風絵)に興味を持ち、そこに描かれる都の風物や人間模様を観賞しながらあれこれと想像することに秘かな喜びを覚える、少し変った性癖を持っております。
東京から退職後61歳から7年間、ボランティアスタッフとして京都府立文化博物館2階の総合展示コーナーの目玉展示「絵巻回廊」で、大画面に映し出される人々の生活や当時の街並みから、来館の皆様に新たな発見をしていただくミニギャラリートークを楽しく皆様と双方向にやって参りました。
今回はこのお話をテーマに旧議場の場から行えるならいいかなと、喜んで引き受けました。
「絵巻回廊」とは京都の歴史の中から平安時代、鎌倉時代、室町時代、江戸時代初期と4つの時代をその時代をビジュアルに視ることが出来る絵画資料のコーナーです。
今回はパワーポイントで場面を移しながら時代変遷を観ていくことにしましたが、4つの時代をすべて網羅するには時間が足りませんので平安時代、鎌倉時代の京都を2つの絵巻物で紹介しました。
まず平安時代は国風文化の象徴的な場面、藤原摂関家の栄華を「栄花物語」から絵巻物化した重要文化財「駒競行幸絵巻」(静嘉堂文庫と久保惣記念美術館所蔵)を通して、そこに描かれた藤原頼通の大邸宅「賀陽院」での駒競と宴の場面から、行幸された天皇、東宮を交えての装束の見せ方、衣冠束帯の裾のオシャレの様子や、「打ち出でのきぬ」と呼ばれる帳から覗く様に見せる十二単のきらびやかで雅な様子を寝殿つくりの邸宅内で紹介。
また、庭に設けられた池で雅楽を奏でる2艘の楽船(唐楽、高麗楽)の姿、門前に集まる人々の履物から下級貴族や庶民、警護の士、牛車を引く従者などの身分の違いが「沓」「草鞋」「裸足」「藁沓」等で判別できることをお伝えしました。
次に鎌倉時代。京は鎌倉とは比べ物にならない、紛れもない都であった様子を国宝「一遍上人絵伝」第七巻(東京国立博物館所蔵)を通して紹介しました。
京の鴨川四条大橋の西には祇園社の西大門(朱塗りの鳥居)があり、鴨川では馬を洗う馬子の姿や水面下の馬の腹が鮮明に写実的に描かれ、四条通「四条釈迦堂」では一遍上人の「踊念仏」「賦算」(お札)に群がる、身分の上下に関わらぬ熱狂的な群衆の姿。四条大路に常設された商業店舗に見られる「店棚」(商品を並べ展示するもの)と、そこで商われる履物、西瓜、瓜などの商品を確認。
夜の警護のため京の主要辻に設けられた鎌倉幕府六波羅探題の治安部署「篝屋」が描かれ、京の不安な夜を治安維持していた様子もわかりました。また六条堀川の東の市跡が、暮らしの窮した下層民やライ病患者など都市難民のたまり場であり、そこで「念仏踊りや」「賦算」の興行を行う一遍達遊行僧。物見遊山で観る人々と、それを目当ての仕出料理の店などを紹介。中世の京の繁栄と、その後の町衆の誕生を思わす商工業者の暮らしと文化を垣間見し、時代の変遷を味わって頂きました。果たして講座参加の皆様に理解していただけたお話となったかわかりませんが、皆様最後まで熱心に聞いていただき、お話が皆様の京都の歴史変遷を知ることの一助となれば幸甚です。またの機会で「洛中洛外図屏風絵」から室町時代から織豊政権、江戸時代初期の京都の町、人、文化の時代変遷をお話したいと思います。ありがとうございました。(会員 野津隆)
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(写真 須田信夫)