都草創立10周年記念式典・祝賀会を盛大に開催(2016.10.8)
都草創立10周年記念式典・祝賀会が、10月8日(土)に京都東急ホテルで盛大に開かれました。記念式典には会員104名が出席、門川大作京都市長をはじめとして、日頃都草が大変お世話になっている方々にも多数ご臨席いただきました。
式典に先立ち、宗教学者の山折哲雄先生に「京都の魅力と魔力」と題した記念講演をしていただきました。
講演で山折先生は「下京は芦刈山の近くに居を構えて28年、まだまだ本当の京都の魅力と魔力を理解できていないかもしれませんが・・・」と前置きしながら、「京都は、根本を創っている縄文的要素、弥生文化以降に現れる弥生時代要素、そして近世・近代的要素のある都市と、ドーナツ状の三重構造で出来ています。さらにほかを排することなく重層的に存在しているこの地理的状況に他なりません。また、京都はよく千年の都といわれますが、実際1000年以上もの歴史をもつ都市は世界中探しても京都しかありません。このことは世界の人たちに大いに語っていい京都の特質だと思います。さらに、特筆すべきことは、300年、400年と続く長期政権が、この1000年の間に2度(平安時代、江戸時代)も確立している事です。その原因は国家と宗教の関係の調和が取れていたことが大きいのだと思います。各時代の政治権力と宗教的権威、この2つが、京都の地理的条件と同じようにそれぞれがお互いを守り続けてることによって、長期の平和が守られてきた、といえるのではないでしょうか。」と、独自の観点から1時間にわたりたっぷりお話し下さいました。
引き続き式典に入り、始めに小松香織理事長が、お集まりいただいた皆様に、都草創立10周年記念式典開会のご挨拶を申し上げました。
小松理事長のご挨拶をご紹介いたします。
「この度、京都観光文化を考える会・都草の理事長に就任いたしましたばかりの小松香織です。優秀な先輩方に支えられながら、4か月が経ちました。
山折先生の「京都の魅力と魔力」という記念講演を大変興味深く聞かせていただきました。と申しますのも、先日、建仁寺 方丈襖絵 などで知られます 絵師、海北友松 のご子孫だというご婦人が「私は、日本には47都道府県ありますが、どこよりも‘京都’、京都というこの二文字が、兎に角一番好きなんです!」とどうやら常日頃から思っていることらしく、初対面の私に、にこにこしながらおっしゃったことを思い出しました。なるほど、‘京都’というこの二文字自体が、何よりも魅力と魔力を放っているのではないかと、ふと考えましたところです。
さて、皆様ご存じのとおり、都草の事務所は 京都府庁旧本館2階にございますが、発足当初を振り返りますと、お家賃もお支払しなければならないというのに、金庫に1万円しかないというような時もございました。
そのようなこともございましたが、10年経った今、お陰様で都草は、会員一人一人が、情熱と好奇心をパワーに変えて、自由な雰囲気の中、自己実現の場として、いきいきと活動している、という、本当に魅力ある組織になりました。
現在の会員数は375名、このうち京都以外の方が約100名おります。また、京都検定1級所持者が133名おりますことも、一つの大きな特徴になっております。
このような、今日の都草の姿がございますのも、ひとえに、ご列席の方々をはじめ、これまで奮闘牽引してまいりました坂本前理事長並びに役員の方々、そして会員の皆様方、その他数えきれない多くの皆様の、深いご理解とお力添えの賜物と、心より感謝申し上げます次第です。
そもそも都草は、最初の京都検定1級合格者が中心になり、その活動の場を創出したことに始まりまして、平成19年にNPO法人となりました後は、京都府庁旧本館2階に事務所を構え、旧知事室のご案内を担当し、続いて環境省京都御苑管理事務所主催の「京都御苑歴史散策の集い」でも定点でのご案内を担当いたしましたので、平成20年には、本格的に社会的な貢献を始めたわけです。
その後、歴史探訪会、研究発表会、文化交流部会、京都検定対策委員会、おでかけ講座等々、都草の活動範囲もずいぶん広がりました。先日、私がある会場でスピーチを致しました時のことです。予期せぬことでしたが、大きなスクリーンに都草のHPが映し出され、会場におられた方々に活動内容をご覧いただいた、ということがありました。非常に誇らしくもあり、感慨深くもありました。
活動の中でも、創立当初からの美化活動は既に100回を超え、最近通年拝観で話題になっております京都御所でもさせていただきました。毎週日曜日に開催しております京都御苑歴史散策ツアーも3年を越え、気が付けば、祇園祭後祭復興巡行を果たされた四条町大船鉾のボランティアも、丸10年が経っております。
そして都草は今年、今後5年、10年先を考え、新たに「都草 わくわく倶楽部」と「京(みやこ)のこと語り隊」という二つの事業を発足させました。これらの新しい活動を大切にじっくり、確実に紡いでまいりたいと思っております。
したがいまして、今後も引き続き会員同志がお互いを尊重し、高め合い、井上満郎先生の言葉をお借りすれば、‘自らの社会化’にも更に磨きをかけ、「京都の都草」「みやこみやこの都草」として、自己表現ができる喜びをかみ締めながら、地道に頑張ってまいりたいと思っております。
皆様には今後とも一層のお力添えを賜りますよう、心よりお願い申し上げます。」
続きまして、来賓の門川大作京都市長から、お祝辞を賜りました。
このあと、来賓の方々のご紹介、頂戴した祝電のご披露があり、感謝状贈呈に移りました。2007年4月の都草設立に功労のあった8人の方に、小松理事長から感謝状と記念品をお贈りしました。
2007年4月の都草設立総会での写真と比べても、皆さんお変わりありませんね。
また、10周年にあたり、昨年から公募していた「“都草の5年後”へ向けて、新たな事業の企画案」応募者の中から、優れた企画で都草の新しい事業として採用された「わくわく倶楽部」と「京 (みやこ)のこと語り隊」を提案した小松理事長と高橋明俊副理事長に、坂本孝志特別顧問から表彰状と記念品をお贈りしました。
式典の最後に、10周年記念事業の実行委員長を務めた坂本特別顧問が挨拶に立ち、都草の5年先、10年先を見据えて新規事業を立ち上げた経緯と意義についてご説明しました。
式典後は、会場を移動して盛大な祝賀会です。開会の挨拶を福井大作監事、乾杯の音頭を古典の日推進委員会 山本壯太様にお願いいたしました。
祝賀会のアトラクションは、嵯峨の清凉寺を舞台とした能「百万」から、木村哲夫会員の謡曲と安田富枝会員、藤井久美子会員お二人の朗読という新たな試み。藤井会員によりますと「都草の活動の中に文化的な要素も今後おおいに採り入れていきたい」という思いからの企画です。
◎「百万」を詠んで
それは、夏のある日のこと。
「十周年に朗読を一緒にしてもらえませんか」。藤井さんのあまりにもサラリとした言い方に、「良いですよ」と軽く受けてしまった。後にこの事が、後悔の念と眠れない夜を過ごすことになるのである。
百万?ん?これをするの?その時点で無理だと思ったのだが、藤井さんや木村さんの頑張りを思えば、私が「できません」などと、どうして言えよう。
あんなこんなで本番を迎え、「大きな声で狂気の女を演じて」と言われた指導の先生の言葉を思い出しながら、とにかくお二人の足を引っ張らないようにと詠んだ。終わってホッとした。「良い思い出になるよ」と背中を押してくれた藤井さんの言葉には、まだ至っていない。先ずは、お二人に感謝している。
(安田富枝会員)
「百万」に引き続き、公益財団法人 四条町大船鉾保存会の皆様により、祇園囃子をご披露いただきました。
顧問の井上満郎先生からも、ご祝辞をいただきました。
宴もたけなわとなり、コーナー司会を受け持った芦田喜雄理事が、会員の中から3人の方を指名してご挨拶していただきました。
10周年記念式典開催にあたり、会員の方に寄稿していただきましたので、祝賀会の風景とともにご紹介します。
◎都草10周年記念式典に参加して
はじめに:10年前のスタート時に、今回の式典が、一流のホテルで、京都市長の出席のもとで、開催出来るとは、誰もが、全く予想できるものでなかった。会員人数が、370余人も。感無量。
記念講演:山折先生の話の中で、82歳で、比叡山に登られ、将門石について、話されたのが、印象に残った。約850mの山を82歳で、感嘆。来年私も挑戦。私が、先生の風貌に、似ているとの噂。名前が同じ(テツオ)。
記念式典:8名のスタート時の理事の一人として、表彰を受けたが、一番の功労者は、前理事長の坂本さんと思う。リーダーシップ、行動力等に優れ、今日の都草を築いた人。本当に、ご苦労さんでした。
祝賀会:「百萬」に参加したが、大変難し現在語訳に、藤井理事が挑戦。都草の今後の活動に、文化が大切なキーワードであることを示したものと理解。
さいごに:資料データー一覧表は、各部会の人達で、反省データーとして捉え、そして今後の各部の在り方に活用できるものと思った。次の20周年記念を目指して。(記念式典の開催で、役員の方々、事務方の皆様、ご苦労さんでした。深謝。)
(木村哲夫会員)
京都検定1級取得者が大勢いる都草への入会は、緊張しつつもチョッピリ誇らしくもあったことを懐かしく思い出しますが、あれから9年近くになりましょうか。
会員相互の研鑽と社会奉仕を軸とした活動に共感をおぼえ、色々と参加して参りました。研究発表会、歴史探訪会等々、共に学び楽しむ会に関わる会員の知識の奥深さと、それを得るまでの執拗なまでの熱意には舌を巻くばかりで、生半可な知識でお茶を濁すことは出来ないと身が引き締まる思いで過ごして来ました。が、しかし、たとえそれが不完全なものであっても、それを受け止める会員の姿勢は至って大らか。とにかく、みんな明るいのです、温かいのです。
通り一遍でない都草の高い理念とこの得難い明るさは創設時から確実に継承されてきたものでしょうが、役員の方達の豊かな人間性と並々ならぬ尽力によることは間違いありません。
今後益々活動の範囲は広がっていきましょうが、お互いを尊敬し合いながら自己を高めていく場として、これまでと変わりなく居心地のいい都草であり続けて欲しいと願っております。
(大谷芙美子会員)
私が『都草』を知ったのは、京都検定2級合格後の京都新聞に、1級合格者が中心になり京都好きの人々の会を立ち上げられた記事を読んでの事でした。もともと京都生まれで興味もあったことから入会も考えたのですが、私のイメージとしては京都学の猛者の集りのように思え躊躇しておりました。その後、退職後の空白を埋め、知識を広げたい一心から意を決し入会をした次第です。
入会後は、主に美化活動と歴史探訪のグループで活動したのですが、イメージとは異なり実に和気藹々で、美化活動では宮司や住職の貴重なお話を伺え、また、歴史探訪ではグループの皆さんの知識に圧倒されながらも地歴の興味深い話を纏めて会員の方々に説明する自己満足を味わっている所です。そう考えると都草の活動とは、京都検定が座学であるなら、実際の京都に触れられる実学の場であるとも言えます。今後もこの活動に参加し知識を広げていきたいと思っています。
(丹羽氏昭会員)
石清水八幡宮の本殿などの国宝昇格で、国宝の棟数が72棟となり、奈良の71棟を超え京都が全国一となった。日頃から文化財保存の意義に強い使命感を持っている京都の風土が結果として表れたものと思う。
その風土形成の一翼を担っているのが、検定ブームの魁となり、今年で13回目となる京都検定がある。他の多くの「お国検定」が先細りとなる中で京都検定は健闘をしている。京都の受験者は勿論、「京都本」を手に持ち京都を訪れ、その際に、多くの人が文化財に関心を持たれるが、「京都本」に飽きたらない人が検定にチャレンジし、中には京都に移住される人もおられる。
この京都検定が、都草創始のきっかけとされている。そして、今や都草は、歴史探訪や研究会、美化活動などの会員間の研鑚に留まらず、府庁や御所の案内、よもやま話などを通じて、京都の文化や歴史に興味を持つ一般の人たちに大きな影響を与え続けている。今後も、都草が活動を通じて、継続して文化財保護の関心を高める役割を果たすことに期待している。
(久世幸男会員)
高橋明俊副理事長の閉会挨拶で祝賀会もお開きとなり、参加会員全員で記念撮影を行いました。
(写真撮影 池田能久、須田信夫)
(広報部 須田信夫)