第121回研究発表会報告、福井 大作 会員、久宗 圭一 理事(22.5.26)
2022.06.01
第121回研究発表会報告、福井 大作 会員、久宗 圭一 理事(22.5.26)
YouTube 期間限定 6月3日(金)午前10時から6月9日(木)午後5時まで
会員のみ限定公開
◆日 時:令和4年5月26日 午後1時10分~午後4時00分
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
◆研究発表:1.京都の景観と街並み探訪 福井 大作 会員
2.文学・映画 ロマンの世界に広がる、知られざる京都大学を巡る 久宗 圭一 理事
◆参加人数:ひとまち 26名
第1部は、 京都の景観と街並み探訪 福井 大作 会員です。
京都の歴史ある美しい景観や風情ある街並みを守っていくため、京都市では全国でも最も厳しいと言われる独自の条例や制度をつくって来ました。
「京都市市街地整備条例」は「点」(単体)ではなく「面」(地域)で景観を整備・保全・創造していく制度です。
「屋外広告物の規制」では、屋上広告、ネオンサイン広告の禁止、看板の色・サイズ・場所の厳しい制約で、ものすごく町の雰囲気が変わりました。
「高さ制限」 最高31mに制限。これが京都にタワーマンションが出来ない理由です。地域ごとに31m~10mまで6段階に設定されています。
「鴨川納涼床審査基準制定」で高さを3.6m、広告物や色電灯禁止など規制と統一化ですっきりした景観になりました。
「歩いて楽しいまちなかゾーンの整備・拡充」では車中心社会から歩行者中心社会へのコンセプトから、四条通りの歩道拡幅、カラーラインの設置などが進んで
います。
「無電柱化の推進」は、コスト高や家が密集していることなどで進みませんが観光地やメインスリートでは青空の見える景色が目に入るようになりました。
京都の魅力は有名な寺社や名勝に加えて京町屋が醸し出す街の雰囲気です。京町屋は平安時代に誕生し、経済の発展に連れて成長し江戸時代中期に成熟期を迎えますが幕末の戦火で大半が焼失し、今に残るのはそれ以後のものです。
平安時代からの時代ごとの絵図により、その変遷を興味深く見ることが出来ます。特に江戸時代の17世紀終わりの桟瓦の考案により、一般に爆発的に普及し、現在の町屋の形式が完成します。
京町屋の間取り 表側に店舗、奥に住居を構えた職住一体型の表屋造りと言う形式の町屋が多く見られ「ウナギの寝床」とも呼ばれました。
坪庭はうす暗い町屋に光と風を送り込む他にも、水を撒いて奥庭と連動し温度差を利用して涼しい気流をつくるという先人の知恵が生きています。その他、通リ庭や火袋、嫁隠し、土蔵など快適に暮らすための工夫が詰まっています。
京町屋の外観 全て切り妻造りの「平入り」形式の家が建ち並んでいます。機能性とデザイン性を追求して洗練された趣を醸しだします。
「格子」は京町屋の顔です。シンプルな曲線美が魅力の「犬矢来」や、上げ下ろしの出来る「ばったり床几」、虫籠に似た「虫籠窓」、魔除けの「鍾馗さん」、優美なデザインの「一文字瓦」、店の美意識が感じられる「暖簾」「京看板」「京行燈」など。
平安京の条坊制は時代の変遷とともに変化していますが、碁盤目状の基本形はほぼ変わっていないと言えます。このことから東西南北の通リの名前を憶えれば該当する場所を特定できます。「京の通り名数え歌」を憶えれば簡単で便利です。
その他「難読地名」「辻子と路地」はご興味あれば調べてみてください。(会員 福井 大作 )
第2部は、文学・映画 ロマンの世界に広がる、知られざる京都大学を巡る 久宗 圭一 理事です。
1.イントロダクションでは、京都をテーマパークと見做し、その中のエリアの一つに学問ランドがあること、また京都には神社仏閣、花街と並んで大学という三つの非日常世界があるが、学問ランド=大学はこれまであまり触れられることがなかったことを説明する。
2.京大の沿革と現在の概要では、自重自敬という理念、明治維新直後に遡る沿革、現在の概要に触れ、三つの大学国際ランクは日本では全て2位、アジアではベスト10位内、世界では10位台から60位台に位置づけられるがノーベル賞受賞では米英を除くとトップであることを説明する。また時計台が他大学のものと比べて際立って美しいことを説明する。
3.京大と東大では、日本の大学の双璧である両者を比較して、規模は東大が一回り大きく、学生の比較では東大生は東京出身が3分の1強を占めるローカルな大学であること、また街の広さに起因する住環境での顕著な違いを説明する。
4.明治・大正ロマンと京大では、モルガンお雪の芸妓時代の恋人が京大生であったこと、中原中也の立命館中学在学中の恩師が、京大在学中の人物で、その人の影響と感化により詩作に目覚め、卒業後上京する大きな要因となったことを説明する。
5.文学に描かれる京大では、京大出身の作家を現役5名、物故者9名を挙げ、現役作家の内の森見登美彦と万城目学の特徴を説明した後に、森見氏の該当作品3作、万城目氏の1作の詳細とその特徴を説明する。続いて「活動寫眞の女」(浅田次郎著)、「数字であそぼ。」(絹田村子著)での京大の描かれ方を紹介し説明する。「数字であそぼ。」は漫画で今も連載中である。この章の最後に真継伸彦著の2作、高橋和巳著の1作の古い作品を紹介し、京大の根底に自由の精神があることを説明する。
6.映画と京大では、「羅生門」と京大との浅からぬ関係を説明し、京大が舞台で京大生を主人公にした新旧の作品4作を紹介し説明する。
7.現在の京大では、京大が主催する京大変人講座を紹介し、各回の内容とその根底に根差す考え方を説明する。
更に京都に根付く喫茶店文化が京大でも独特の展開をしてきたことを、その由来と風土を含めて説明する。最後に京大生気質について、京大出身の大島渚氏と東大出身の山田洋次氏という二人の映画監督を対比して説明し、最近の事例として京大カレー部を紹介し、まとめとして京大生気質を、「一つの事に集中し、我が道を突き進む、良い意味で変人な人が多い」と総括する。(理事 久宗 圭一)
(広報部 岸本 幸子)