第116回研究発表会報告、岡田 英三郎会員、吉岡 央(ひろむ)会員(21.11.19)
2021.11.24
第116回研究発表会報告、岡田 英三郎会員、吉岡 央(ひろむ)会員(21.11.19)
YouTube 期間限定 11月26日(金)午前10時から12月2日(木)午後5時まで
会員のみ限定公開
◆日 時:令和3年11月19日 午後1時10分~午後4時00分
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
◆研究発表:1. 「上賀茂神社の歴史的事件二題」 岡田 英三郎 会員
2.「京都生まれの画家 吉田初三郎、その画風」 吉岡 央 会員
◆参加人数:ひとまち 25名
第1部は、 「上賀茂神社の歴史的事件二題」 岡田 英三郎 会員です。
上賀茂神社は貴布禰神社を摂社化せんとして、貴船地区住民と平安時代以来争論があったが、寛文四年(1664)に貴布禰神社は上賀茂神社の摂社であるとの幕府裁定がでた。この寛文年間に、深泥池貴舩神社や柊野貴船神社が勧請されている。紫野貴船神社を含め、これら貴船神社の設置は、上賀茂神社領内の住民支配の政策の一環ではないかと推測しました。
ここで発表させていただいた二つの大胆な仮説は、今後も検証してゆきたいと思っています。
発表後にも、いくつかのご意見をいただきました。お礼申し上げます。
(会員 岡田 英三郎)
第2部は、「京都生まれの画家 吉田初三郎、その画風」 吉岡 央 会員です。
Ⅰ 文才1は随筆。 鳥瞰図の多くは折り畳み式で表面には勿論鳥瞰図が描かれ、裏面には観光名所の説明が書かれいるがその作品数の半数位には、更に (繪に添えて一筆) とのタイトルで鳥瞰図に関する随筆が見事に書かれていることである。昭和3年11月10日、京都では昭和天皇即位の大典が華々しく行われ、これを祝って京都府の依頼で初三郎に(京都名所大鳥瞰図) の制作が舞い込んだ。表面には京都市の鳥瞰図と京都御所・桃山御陵の説明があり、裏面には名所略説として京都市内 (府下も一部あり) の名所を説明している。そして最後には初三郎の随筆 (繪に添えて一筆 「時維れ{ときこれ}皇紀二千五百八十八年、昭和三年十一月のよき日、かけまくもあやに畏{かし}こき我が今上{きんじょう}陛下は、・・・」) が約1500字で書かれている。内容は、
① 昭和天皇即位の大典の意義 ② 京都市概略地理
③ 昭和天皇への思い出話も含め、初三郎の仕事ぶりを紹介
以上5部構成である。文体としては平仮名使用で古文に近い文章であるが、各部とも流暢にしっかりとまとめられている。ここで驚くのがかなり難解な漢語が多用されていること
だ。初三郎は画業で大変忙しいと思われるのに、それにも拘わらず漢語をしっかりと勉強をして、堂々と使いこなしている。ただ敬服するばかりです。機会があればこの随筆を是非読んで下さい。
Ⅱ 文才2は和歌。作品数は少ないのですが彼は和歌にも親しんだ事です。和歌との出会いや師匠は誰であったか、殆んど分ってはいませんが、 (八戸市鳥瞰図 昭和八年初夏)には地元八戸に因んだ和歌が二首投稿されています。
第一首「君が代の 姿をこゝに白銀や、海の景色の 麗はしきかも。」
第二首「花ふゞき、雪風吹かと 見まかひぬ、その蕪嶋(カブシマ)に かもめ飛ぶさま」
第一首は八戸市内海沿いの町、白銀 (シロガネ) を詠んだ一首。白銀には戦前海水浴場があり景観の地であった様だ。解釈 (自説): 昭和天皇の治世も、白銀から見る海の景色も共に素晴らしく非の打ちどころがない。
第二首は八戸港に隣接の蕪嶋 (島) の海鳥カモメ(ウミネコ) を詠んだ一首。蕪嶋は多数のウミネコの飛来地と知られ、その羽根は黒いが体の大部分が白い。解釈 (自説) :多数のウミネコが乱舞しており空は真っ白だ。それは花ふゞきや雪吹雪かと見間違う程だ。
随筆といい、和歌といい、初三郎の教養の高さが偲ばれ、彼は万能人間と言っても過言ではないと思う。
(会員 吉岡 央)
(広報部 岸本 幸子)