第38回研究発表会(12.3.22)
第38回研究発表会(12.3.22)
◆日 時:平成24年3月22日午後1時15分~午後4時
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
◆研究発表:1.『ようこそ 桜の写真館へ』都草理事 小松香織
2.『京の仏像さまと木』都草会員 伴仲啓良
◆参加人数:52名
◆参加費 :300円 一般参加費 :500円
第1部は小松香織さんの写真コレクションより『ようこそ 桜の写真館へ』です。昨年の秋、色鮮やかな紅葉の画像と共に見どころと見方をお話頂き大好評でした。今回は春に先駆け桜の画像と共にお勧めスポットと桜への熱い思いを軽やかに語って頂きました。「月刊京都」にも紅葉特集につづき今年は「都草会員に聞く私が愛する秘蔵の桜」が掲載されました。次回に備え皆様がお勧めする桜を教えて頂きたいとのことでした。
桜は日本人の心にとってとても共感性があるものだと思います。桜と日本人の心情という事であまりにも有名な歌が幾つもありますが、その中で西行の「花見にと群れつつ人の来るのぞみぞ あたら桜の科には有ける」は桜の姿をカメラに収めるため人が群がったりして、折角の良いシーンが見ることができない、撮れない。桜には罪は無いですがという感じで、昔も今も同じだった様に思います。梅は本妻、桜は愛人と言われているように、桜を見るとカメラに収めたくなる衝動にかられます。空と桜より、グリーンのグラスとピンクの桜のコントラストが好きです。お勧めのところは平安郷です。龍安寺が以外と桜が凄い。大宮交通公園は丸山公園の枝垂れ桜の二世の実生の木で白に近いピンク色の上品な花びらです。昭和29年3月22日にしだれ桜が京都府の花に指定されました。58年前ですが今日の発表日と同じ日で光栄です♪
京都府庁の桜は今年、多くのマスコミで取り上げられています。佐野藤右衛門さんのお話では4月7日が満開の予定です。今回、桜についての発表が決まった時点で桜といえば「佐野藤右衛門」さん。是非お話を聞いてみたい!と思い府庁の方からも連絡を取って頂き、自分自身が出向く予定でしたがなんと佐野藤右衛門さんが旧本館の事務所に来て頂けることになりました。佐野藤右衛門さんのお名刺は「桜とお酒」の粋な挿絵が印象的です。初代の名桜は昭和22年まで生きることができました。
この桜の子供が現在の丸山公園の枝垂れ桜ですが他に兄弟が2本ありました。その内の一本が佐野藤右衛門のお父様がお亡くなりになった時に一緒に枯れてしまいました。その桜で六尺の観音像を造られました。佐野さんの本にもその観音像がどこのお寺に祀られているのかは、記載されていません。なんと、その謎のお寺を佐野藤右衛門さん自身から、教えて頂きました。今回の研究発表の会場でそのお寺の名前を聞かせていただきました。大変貴重な秘話ですのでこちらのレポートには記載できません。とても貴重なお話をして頂きありがとうございました。
第2部は伴仲啓良さんで『京の仏像さまと木』です。今回の研究発表の為に用意して頂いた資料はA4プリント21枚の過去最高のボリュウムでした。これは何年も掛けて書き溜めたデータのほんの一部のようです。都草に入会した3年程前に「京都の仏像さんの中でお気に入りはどれ?」という質問をされました。その時に、学生の時より興味のあった樹木と、木から造られている仏像さまを併せて深く調べていくようになりました。まず、第一に京の仏像さまの製作様式、第二に時代の変遷、第三に木との関わり合い、第四に人気ベスト50位、といった内容です。
平安時代にわが国では彫刻に適した良質の木材が多く産出されました。造仏が盛んになっていく過程で香木性・色調性等から技術的にも革新していき、楠・榧・檜の材でも制作できるようになりました。一木造は巨木が必要で費用面でも困難が伴われますが、一人の仏師の制作となるため、想いのこもった作品になります。制作上の利便性から寄木造の方が栄えましたが、大きさが小さくても、一本造りの方が本当の仏教の教えというものが伝わってくるように思います。鎌倉時代に仏像彫刻の技術は最高潮に達し、室町時代以降はそれ以上の進歩はなく現在に至っているように思います。
皆が選ぶ、気になる「京の仏像人気NO.1」は国宝第一号に指定された「広隆寺 霊宝殿 弥勒菩薩半跏思惟像」でした。世上のお方々の中には「あまりの美しさに離れられず1時間近く見ていたら、坊さんに監視されていた」というコメントもあるくらいです。作風などから朝鮮半島からの渡来像といわれ、7世紀頃に造られたものといわれています。しかし、この像の右の腰から提げられた綬帯は楠で、後に付加したものとされています。楠は朝鮮半島では自生していない為、日本で造像された可能性が高くなっています。第6位には象に乗ったハードボイルド!国宝の「東寺 講堂 帝釈天半跏像」が挙げられております。通称は男前の帝釈天さん。こちらは檜の寄木造りです。古代神話の戦いの神インドラが元となり、甲冑をまとい、象に乗り金剛杵(ヴァジュラ)をとって毒龍と戦い、阿修羅に勝利し仏門に帰依させた英雄です。
第12位の鎌倉時代の重文の「浄瑠璃寺 吉祥天立像」は本当に素晴らしいです。気品が漂いながらも、さりげない美しさ。最高です!平安美人はこういう膨よかな、お顔とお姿だったと思います。こちらは檜材の一木・割矧造りで截金文様です。
このような流れで第51位まですばらしい仏像さまの画像と楽しいコメントを聞かせていただき参考になりました。今日頂いた資料をもって改めて仏像めぐりをしてみたいと感じました。ありがとうございます。
(事務局 岸本幸子)