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第130回研究発表会報告、坂本孝志 特別顧問、高橋正一 会員(23.10.16)

第130回研究発表会報告、坂本孝志 特別顧問、高橋正一 会員(23.10.16)
 YouTube 期間限定 10月21日(土)から10月27日(金)午後5時まで
    会員のみ限定公開 
 
◆日 時:令和5年10月16日 午後1時10分~午後4時00分
 
◆場 所:ひとまち交流館 京都 2階
 
◆研究発表:1.明治天皇大葬と、太秦村の牛 坂本孝志 特別顧問
 
      2.兼好法師の素顔 高橋正一 会員
 
◆参加人数:ひとまち 35名
 
 
 

第1部は、明治天皇大葬と、太秦村の牛 坂本孝志 特別顧問です。

【祐宮の誕生】
明治維新の王政復古に尽力した公家の権大納言中山忠能(ただやす)の次女中山慶子(よしこ)は、17歳で権典侍(てんじ・すけ)として孝明天皇の宮中に出仕し、翌年嘉永五年(1852)に実家の中山邸で皇子を出産した。幼名は祐宮、後の明治天皇である。
その頃の出産および乳幼児の死亡率は非常に高く、忠能も神社へ安産祈願を怠らず、諸事を陰陽寮(土御門家)の占いに頼った。数人の御乳人(おちのひと)も付き、祐宮は4歳までを中山邸で質素ながらも幸せな日々を過ごした。産屋(御産所)は現存していて、訪れるひとに当時の面影をつたえている。

【明治天皇崩御】

明治天皇伏見桃山陵
5歳の時御所に移った祐宮は、多感な時期を御父母や女官たちに囲まれて育った。13歳の時に禁門の変が起き、やがて孝明天皇が崩御されると、明治二年には皇后(一条美子)とともに東京へ遷られた。
明治天皇がなつかしい京都へ帰ってこられたのは、東京青山での御葬儀のあと、ご遺体が列車で運ばれ、伏見桃山陵に埋棺された大正元年9月14日の夜のことであった。
 

【太秦村の牛】

太秦村 湯浅家の牛
明治天皇が崩御された6日後に、葛野郡太秦村字嵯峨野の農家に宮内省から通知を受けた京都府の職員が突然訪問し、主の湯浅伊之助に「天皇の霊柩車の曳牛として、当家の牛を買い上げたい」と告げる。
牛は「位牌額」という全身が黒くて額にくっきりとした白い紋様がある牡牛で、8月9日には飼主の湯浅伊之助とともに貨車で東京へ向かった。
この間のできごとを日出新聞(京都新聞の前身)が詳細に記事にしている。その中には、湯浅家の燐家中山家の養女「中山うい」が、祐宮の御乳母(おんめのと)であったことも書かれてある。
 
日出新聞は「中山うい」について、「先帝の御靈の思召にて導かせ給ひたる奇しくも芽出度き因縁なるべし」と記している。(特別顧問 坂本孝志)
 
 
 


 
 
第2部は兼好法師の素顔 高橋正一 会員です。
 鎌倉時代後期、日本三大随筆の一つ『徒然草』を書いた兼好法師(以下、兼好)は、代々、京都の吉田神社を預かる卜部家の庶流の家に生まれ、吉田兼好と言われてきた。その後、後二条天皇の六位蔵人から、従五位下・左兵衛佐となったとされている。
 
 
 しかし、横浜市の金沢文庫に残る膨大な紙背文書の中に兼好を示す文字が多数発見され、複数の学者による調査・研究が進んだところ、兼好は鎌倉幕府の重鎮「北条(金沢)貞顕」の被官(家臣に近い)である可能性が高まった。
 それは、貞顕が文書中、自分の被官のような扱いをしていることからも、また、兼好が貞顕の重臣で側近の「倉栖兼雄」の兄弟か親族と推測できるからである。
 さらに「小川剛生」慶大教授は、「従来定説となっている兼好の経歴は、室町時代中期の京都吉田神社宮司[吉田兼倶]により、すべて捏造されていた」という、画期的な説を発表した。
 
 
 貞顕は金沢文庫充実に力を注ぐ教養・文化人で、都の貴顕と広い交流があり、その上、当時の有力公家「堀川家」との姻戚関係もあり、六波羅探題も長く務め、鎌倉幕府の朝廷担当(朝廷の情報収集・監視・工作など)としては適任であり、長年、そのように働いてきたと考えられる。
 兼好は「売寄進」という一種のワイロや、文学的才能(特に和歌)をもって、大覚寺統などの公家社会に食い込み、出家後も旧主の貞顕を通して、幕府に朝廷情報を洩らしていた可能性がある。それは、あくまでも文壇活動の片手間程度の所業なのかもしれないが・・・。
 
 
 ただ、倒幕を模索していた後醍醐天皇に仕える「堀川具親」に近づき、また、具親の親しい友人であり、貞顕の長男でもある仁和寺の有力塔頭「真乗院」院主「顕助」の従者となって、後醍醐帝の言動を探っていた節がうかがえる。
 出自から鎌倉時代末期までの、兼好の考えられる人物像などを考察した。(会員 高橋正一  )
                                  (広報部 岸本幸子)
 
 
 
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