活動内容

第39回研究発表会(12.4.24)

 第39回研究発表会(12.4.24)

◆日 時:平成24年4月24日午後1時15分~午後4時
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
◆研究発表:1.『京の良さを求めて』都草会員 木村哲夫
       2.『近代化遺産と文化財制度について』副理事長 松枝しげ美
◆参加人数:50名
◆参加費 :300円   一般参加費 :500円
 
 第1部は研究発表6回目の木村哲夫さんです。何故、京の良さを求めるようになったのか?についてお話して下さいました。
 京都の真ん中で生まれ育ちました。若い時はその事が大嫌いで大阪に脱出していました。が50歳になって戻ってきて感じたことが「京都って素晴らしい」でした。昨年100歳を迎え亡くなった母親はいろんな社寺に行く度に「ええなぁ」を繰り返していました。謂れも開祖も何も知らない女性でしたが「ええなぁ」を感じるようです。
その様子を見ていると、京都に生まれ住み続けている人が感じる京都と、観光客が外側から見る京都の良さは違うことに気付きました。
 

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毎年今年の漢字で1年を一字で表現するのと同じ様に、京都を漢字一字で表すと安らかの「安」だと思っています。京都には「安らぎ」を感じられるところが多いということです。京の良さを求めて仏に接したい気持ちがありました。しかし信仰心のない者がただ手を合しても安らぎは求められません。まず修行のために貝原益軒の「京城勝覧」の道を歩きました。
貝原益軒は福岡の方で京都に24回来ています。70歳の時に夫婦で1年間京都に滞在していました。「京城勝覧」は町の真ん中以外の山裾を17日間・100ヶ所の社寺を巡る500㎞のコースの記録です。
江戸時代の京の町中は賑やかだった様子が絵図からわかります。宿屋は三条小橋にあり、そこからのスタートです。
 

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都名所図会と現在を見比べ、貝原益軒のことを思いながら鞍馬・大原・清水等を歩きました。一番遠い所は石山で36㎞の所です。六道珍皇寺の前には「熊野」の一節が書かれています。ここは時代を遡ると世阿弥も歩いた道であろう、とのことで謡「熊野」の一節を披露♪「熊野」の内容は世阿弥がいた時代より300年前の事を題材にしたものです。ここに京都の「時間軸」を感じます。
歩いて分かったことは「不易流行」の言葉でした。歩いた所を記録し点数評価をしてみると平安時代から変わらない「不易」なものが京の良さを支えているようです。変わらないものに「安らぎ」があります。
 

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 現在住んで居る所の「豊園学区」は周囲約2㎞で二条城と同じ位の大きさです。ここは17日間歩かなくても京都を感じるミニ京都の様です。この中で「不易流行」を探してみました。町の真ん中で祇園祭を支える顔があります。毎年7月15日には「斎竹建て」が朝の4時からおこなわれます。高橋町の人々が注連縄を張るための竹を準備します。柳馬場通りは表鬼門を避けている通りです。他には商業地・寺社町・老舗・伝統工芸の顔を有している町内があります。古い物を多くの人が支えて残して来たところです。2~3時間で巡れるコースで学区内の人と人の絆を創りたいと思っています。町家にはいろんな仕掛けがありましたが、今は殆どがなくなりました。山裾に磐座・寺社があってお参りしますが、実は学区にもお地蔵さんやお祭りがあり安らぎを与えてくれます。
私たちはこれから300年先に残すことができる建物を建てることができるのか?の不安と疑問が残ります。
 
 以上の木村さんのお話を伺い6月に予定されます「豊園学区界隈めぐり」に参加し不易流行を体感したく思いました。
  

 第2部は松枝副理事長の「近代化遺産と文化財制度について」です。京都に残る近代化遺産や建築物を調べる中で最も苦労した事についてお話しをして頂きました。
今回のテーマは娘の夏休みの自由研究を手伝っていく中から都草の活動でも参考になる資料をより詳しくまとめてまいりました。文化財は私達にとって大変身近な物ですが法律や条例が複雑で、区分や種別など大変厄介なものです。たとえば三条柳馬場角にある「旧日本生命京都支店」は大正3年にできた鉄骨レンガ造りの建物で外観は石やタイルで加工された建物です。こちらには「国登録有形文化財」と記したグリーンのプレートがついています。しかし、その前には「京都市登録有形文化財」と記した立カンバンが置かれております。
これを見て『あれ?どっちなの』と思ったことが、文化財制度について調べるきっかけになりました。
 

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それ以来、意識しながら町を歩くと到る所に文化財プレートがあります。近代化産業遺産・歴史的意匠建造物・景観重要建造物・歴史的風致形成建造物等です。法律でこれらは指定されるとプレートを付けることが義務付けられています。しかし新しい法律なので、まだプレートの設定が間にあっていない建物も若干あります。
昭和25年に文化財保護法が制定された時点で、明治30年に指定された「古社寺保全法」・昭和4年の「国宝保護法」等の従来の条例は廃止されました。そして新たに重要文化財・国宝を指定しました。のちに昭和29年には各自治体でも文化財を、保護する改正がありました。京都市で条例が確定したのは昭和56年でした。京都には文化財が多く整理が大変だったようです。
 

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高度成長期には議論される余裕もなく壊されてしまった建物もあります。その反省から平成8年には文化財登録制度ができました。最近では国土交通省より景観法という法律ができました。これは文化財を点ではなく面で考えようというものです。平成20年には歴史町づくり法による指定も制定されました。
近代建築に関しましては経済産業省が独自の調査を行います。平成20年より全国に公募を出し、その中より指定していきます。平成22年には近代建築で初めて国宝に指定された建物も出てまいりました。これは京都ではなく「旧東宮御所(赤坂離宮)」です。京都市の国宝は40件あります。ちなみに二条城の分類はお城ではなく、住宅に分類されています。
登録文化財は全国で7000件程あり毎年100件程増えています。京都府全体では393件あります。名称の付け方は各地方自治体に任されています。
 

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 最初に疑問に思った旧日本生命京都支店は、もともと京都市登録文化財であった建物が、平成8年の国登録有形文化財制度が出来たことにより、平成9年国登録有形文化財に移行し、京都市登録文化財は解除されました。詳しく調べ多くの資料をつくり町歩きし、建物を見比べると楽しいです。
歴史的意匠建造物や景観重要建造物は現在住まれている住宅や、プレートがまだ取り付けられていなく、探し辛いところもあります。また一部改装されてレストランになっている所もあり、プレートがかなり見えにくい箇所に貼られていたりします。文化財に指定された町屋などを見るとやはり「なるほど」と感じるところばかりです。
 
大変貴重な資料を頂きましたので、皆さまも以上を参考に文化財を観賞してみてください。
 
(事務局 岸本幸子)
 
 
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