第16回都草研究発表会(10.2.9)
第16回都草研究発表会
◆日 時:2月9日(火) 午後1時10分~
◆場 所:ひとまち交流館三階第四会議室
◆発表内容
1.『京都の野鳥について』 講師 都草会員 多賀靖治
2.『京都あれこれ』 講師 都草会員 山本喜康
3.『深草十二帝陵と天皇さんのお話』 講師 都草会員 武富幸治
◆参加人数:41名
◆参加費 :500円
★京都の野鳥について語る多賀会員
初めお題を拝見しました時、今までの研究発表会の中でも「鳥」については稀有な対象、
範疇のことでどのようなものかしらと思いましたが、蓋を開けてみればそのような怪訝は淡雪
が融けるように吹き飛びました。講話が終了する頃には、新鮮味と魅力ある多賀会員のお話に
に引き込まれて、とても興趣あるものになっておりました。
★キセキレイ ★ルリビタキ
なんと、鳥が登場します万葉集、伊勢物語、枕草子など古典文学から歌などを引き合いに
出されたと思いましたら、次々と京都の野鳥が生き生きとプロジェクターに映し出されると
いう趣向でした。その鳥達の姿ワンシーンワンシーンが愛らしく、種類によってはこのよう
な美しい色を纏う鳥もいるのかと目を見開いてしまう場面が少なくなく、実際に御苑や鴨川
へバードウォッチングに出かけてみたいという衝動に駆られました。
二条城の障壁画、円山・四条派の写生帳に描かれた鳥達の話、祇園祭りの山や鉾の装飾
品の中の鳥達、言い伝えや昔話に登場する鳥についてなど、いかに昔から日本人は「鳥」を
非常に身近に感じ、慈しんで来たか、を再認識しました。
日頃京都を語る切り口は多いとは思っていましたが、今日はまたその思いを一層強くしました。
★好評の京都あれこれについてついて語る山本会員
山本会員は今回、第5回不思議研究会の時にお話された好評の内容に、さらに新しいもの
を盛り込んでお話下さいました。
大火で移転させられた住民の方々が、旧地を思って通り名に付けているが、元の地とは違
いがあるというお話や、山本会員が幼少期、夏の夕涼みの時によく唄い大流行したという
「大禄年々(念々)」という手合わせ数え唄を、所作入りで披露して下さいました。中にはご存
知の方もいらして大変場が和みました。以下に出だしを少しご紹介します。
※せっせっせ
一つ、ひよこが飯喰うて タイロクネンネン
二つ、舟には船頭さんが タイロクネンネン
三つ、店にはおもちゃが タイロクネンネン
四つ、横浜異人さんが タイロクネンネン
五つ、医者さんが薬箱 タイロクネンネン
↓
このように二十一まで続きます。
続いて持ち時間いっぱい様々な言葉についての薀蓄を傾けられました。
去年の不思議研究会の「一口」(いもあらい)に続き、不思議な字として「罧原堤」(ふしは
らづつみ)の「罧」を挙げられたのを初めとし、「椥辻」(なぎつじ)、「卍」、「左り馬」、「霞城」
(かじょう)、「ノ観」(へちかん)他多数、その言葉の持つ背景について詳しく説明がありました。
お店の看板である「芸艸堂」(うんそうどう)、「後素堂」(こうそどう)、「貝葉書院」(ばいようしょ
いん)の名前の謂れについて等もお話下さいました。
最後に山本会員が新婚当時お住まいになっていた「能登与」という旅館が、作家の吉川英
治氏の定宿であったということで、ある時に吉川氏が、本当は一条大路七本松通付近の松
のある処に行くつもりであったのに、タクシーの運転手さんが間違って一乗寺下り松へお連
れしてしまって云々という逸話などは、さすが山本会員ならではのお話と拝聴しました。
★まず深草十二帝陵について語り始めた武富会員
1月16日の不思議研究会で、福井会員の「深草十二帝陵」というお話が出てまいりました
が、武富会員はあくまで「深草十二帝陵」は俗称であり、正式には「深草北陵」(ふかくさきた
のみささぎ)、仁明天皇を祀る「深草陵」の南に位置する為にその名前があり、何名の天皇
を祀っているかについては言及していないということなどを、さらに詳しく話されました。
「後○○天皇」と「後」のつく天皇が26名おられ、「後」の字を取って、その後に続く文字
だけの天皇がいない6例について、そして「○徳」と「徳」のつく天皇について、また「光○天皇」
と「光」がつく天皇についてや、幕藩時代における後光明天皇の異彩ぶりについてなど、何枚
にも及ぶ手書きの資料をもとに熱弁を振るわれました。聴き手の感興をもよおす内容でした。
明治天皇、伏見桃山陵前の石段の数は、明治二十三年十月三十日の教育勅語渙發の日付
を忘れないようにと設計完成されているというお話の後、「教育勅語」全文を全員で読み上
げるという体験もしました。
各宮跡表を目で追いながら、天皇の長男は祭祀を司るので、長男以外が天皇を継ぐ例
が多かったという話もありました。また、頂きました御陵所在地一覧表もかなり有益に使えそう
です。
机から溢れ落ちそうな沢山の資料を掻き分けながら、額の汗も拭うことなく、終始熱っぽ
く話された武富会員の密度の濃い講話に、会場の熱気が覚め遣やらない様子でした。
(事務局 小松)
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