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活動内容

第144回研究発表会報告、田村 光弘会員、横井 剛会員(25.5.30)

2025.06.03

第144回研究発表会報告、田村 光弘会員、横井 剛会員(25.5.30)
 YouTube 期間限定 6月6日(金)から6月12日(木)午後5時まで
    会員のみ限定公開

◆日 時:令和7年5月30日 午後1時10分~午後4時00分

◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階

◆研究発表:1.「聖護院・金戒光明寺・真正極楽寺(真如堂)」 田村光弘会員
      2.『更級日記』京都紀行〜その魅力と数々の発見〜 横井剛会員

◆参加人数:ひとまち 20名

第1部は、「聖護院・金戒光明寺・真正極楽寺(真如堂)」田村光弘会員です。
聖護院 修験宗の総本山
修験する本堂や仏像を自然の山岳に求め、大峰山を修験道場として修業する特異な信仰の宗教である。
この聖護院は、寛治4年(1090)白河上皇が熊野詣でをしたときの先達を勤めた、増誉大僧正は熊野三山検校に任じられ、常光寺を下賜されたことに始まる。江戸時代、2度の内裏の火災時、この寺が仮の御所になった。

聖護院の森は美しく、秋の紅葉は錦林と称せられた。全国に修験者を統括する立場であったが、明治5年から修験道廃止令が出され、復活の昭和21年までは冬の時代であった。祇園祭の「役行者山」へ、修験者が護摩供養を行う行事がある。
向かいの「須賀神社」では、節分の時に「懸想文売り」が復活している。江戸時代に流行したが、明治になり廃れた。この懸想文を枕元またはタンスの中にしまうと、良縁が得られ、着物が増える。とされた。
注意して頂きたいのは売っている方の姿です。黄色い布を巻き、白いマスク、烏帽子をかぶる。神人(じにん)と呼ばれる神官の下部の人たちだ。懸想文を書いた人が、貧乏なお公家さんではないかと言われる。

金戒光明寺
浄土宗の始まりが、法然が比叡山から降り、最初に庵をかまえ、「専修念仏」を広めた場所と言われる。南無阿弥陀仏と唱えれば誰でも成仏できる。天台宗と真っ向から敵対しました。
熊谷次郎直実がここで入門しています。大原問答や建永の法難など苦難の連続でした。
幕末、会津藩の京都守護職本陣がこの寺に置かれ、1000名の藩兵が多くの末寺に分宿しました。金戒光明寺には京都守護職の本陣もあり、近辺は練兵場にもなった。6年で王政復古の大号令により守護職の仁が解かれるも、戊辰戦争により、会津藩の若い戦士の血が流された。ここは極楽寺のすぐそばでした。

真正極楽寺・真如堂
慈覚大師円仁により、彫刻された阿弥陀如来、比叡山の本尊になりたまえ、と言ったところ、首を三度横に振られた。京の都に下がり一切衆生をお救いください。中でも女人などを救い給え、と言うと、阿弥陀は三度頷かれた。頷きの阿弥陀をご本尊として祀られている。
涅槃図公開 3月1日~31日 動物の数が127種と日本一多い。みんなの顔が明るい。真正極楽寺です。
映画最初のロケ地、牧野省三の「本能寺合戦」

戦国時代の謎
信長が足利義昭のために作った旧二条城、織田信忠が本能寺の変の時、この城に入り亡くなった。とする説がある。妙覚寺からも離れている。
新しい説で、妙覚寺の東隣に二条殿(現漫画ミュージアム)があり、ここに逃げ込んだのではないか、とする説がある。皆様の説はいかがですか。(会員 田村 光弘)

 

 



第2部は『更級日記』京都紀行〜作品の魅力と数々の発見〜 横井剛会員です。
『更級日記』は日々の記録を綴った日記とは違い、受領階級に生まれた女性が人生を思い起こしながら書いた回想記になります。原稿用紙百枚にも満たない作品ですが、そこには現代人と変わらない人生の本質が詰まっています。
今回の発表は、作品の魅力と作品が他の研究(歴史地理学、伊勢信仰、当時の婚姻制度等)に寄与していることを中心に、作品解説、登場人物について論及しました。

日記の構成は、旅の記・都での生活・宮仕えから結婚・物詣の日々・晩年の五部に分けて略年表を作成し、それぞれのトピックスを解説しました。特に祐子内親王家からの再三の出仕要請は作者が才媛であったことを強調し、兄の定義は大学頭、文章博士となり、以後菅原氏長者は定義から続いていることを併せて系図を元に解説しました。

『更級日記』の多くの先行研究では、夫の死を契機に過去の自分を振り返り、「悔恨をこめて」執筆したとします。動機に異論はありませんが、文章全体の躍動感、ユーモアセンスは、「残すこと」から「伝える」ことに変化したと論じ、それが(論議はされていますが)後の『浜松中納言物語』『よはのめざめ』等の物語執筆へと結びついたことを日記の最後、尼との贈答歌の内容を含めて言及しました。

最後に、継母の用語解説、天照大神の私幣禁断、平安時代の晩婚の概念、平安時代の夢について、定説とは異なることが日記には書かれており、それぞれの研究に寄与、または貢献していることに触れました。

テーマである作品の魅力を充分にお伝えできたか分かりませんが、未読の方再読の方双方に、「読むことの楽しさ」はお伝えできたのではないかと思っています。(会員 横井 剛)

                             (広報部 岸本 幸子)