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活動内容

第108回研究発表会報告、豊田 博一 理事、植村 多賀子会員(20.6.22)

2020.07.06
第108回研究発表会報告、豊田 博一 理事、植村 多賀子会員(20.6.22)
新企画 「おうちからでも参加できるよ 研究発表会!」ZOOMによるインターネット配信併用
 
◆日 時:令和2年6月22日 午後1時30分~午後3時00分
 
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
 
◆研究発表:1. 「京都とお酒 今昔物語」 豊田 博一 理事
 
      2.「祇園祭・山鉾に描かれた動物たちを探そう」
         わくわく倶楽部・祇園祭研究会(発表者 植村 多賀子会員
◆参加人数:ひとまち 19名・ZOOM 30名
 
◆新型コロナウイルス感染拡大防止ため、会場が三密とならないよう参加人数を20人までとし、会場にお越しいただけない方のためにインターネットを利用したオンライン配信を併用致しました。
 
第1部は、「京都とお酒 今昔物語」 豊田 博一 理事です。
 本日は日本酒の製造技術・産地の変遷やお酒の神様等について、日本酒と京都についての概要をお話させていただきます。まず、前提として日本酒の製造についてお話します。
 
 
 
 日本酒は簡単乱暴に言ってしまえば、蒸したお米にコウジカビをふりかけ、カビが増殖したのを見計らって容器に入れ水を足して放っておくと造れます。
古代人がお米にコウジカビの組合せからの酒造りを発見したのには驚きます。
 この酒造りの過程は①麹菌によるデンプンの糖化②糖をアルコールに発酵させる酵母菌の働き③雑菌の増殖を抑える乳酸菌の働きなど微生物の力によるものです。
 微生物の知識や化学的原理を知らない(日本人がこれらを知るのは明治時代になってから)古代の人々はこの不思議な現象に超自然的な神の存在を感じ、神への感謝、神への祈りが始まります。
 
 
 酒造りの成功への神への祈願、出来上がった酒を神に捧げる感謝は古代にはそれぞれの地域の神様にされたと思われるが、酒造りが普及するなかで大神神社(おおみわじんじゃ)、 梅宮大社、松尾大社(まつのおたいしゃ)三神社の御祭神が酒造りの神として著名となった。(日本三大酒神神社)
 大神神社と梅宮大社の御祭神は、日本書紀に酒造りに関する記述がある。松尾大社の御祭神は古い文献では醸造の神との記述は見当たらないが、秦氏が酒造りに関与したとの言い伝えがある。
これらの神社の神様が酒造神としての信仰が広まったのは、室町時代後半から経済と流通の発展により、酒造業が全国展開していく過程でと考えられる。
 

 

★日本酒の普及及び主な生産地の変遷
 
 古代には、神への供えものとして年に数回の神事に参加したものが飲むものから出発したお酒は、奈良時代~平安時代中頃には「朝廷の酒」として酒造司(みきのつかさ)を中心に製造された。この頃のお酒は非常に甘い酒で貴族層が飲み手であった。
 古代から室町時代半ばまでのお酒は現代の感覚からすると非常に甘い。これは製造技術の問題もあるが、これらの時代には砂糖はなく、甘いものが非常に貴重であり好まれたことにもよる。現代でもお酒や味醂は料理によく使われるが、当時から料理に甘みを出すためにお酒は使用されていた。
 
 平安時代中頃以降、室町時代(応仁の乱頃まで)には、経済の発展に伴い、お酒を日常的に飲む層は、
貴族層 → 武士 → 庶民へと広がって行った。
 このころまでのお酒の生産量、販売量は都のあった京都が群を抜いて多く、製造技術も情報の集まる京都がトップを走っていたと思われる。
 室町時代前期には、日本で最初の酒の銘柄「柳酒」を頂点に、洛中洛外に342軒もの造り酒屋があった。
 
 
 室町時代(応仁の乱以降)以降、京都のまちが一時的に荒廃したことや、技術革新と流通の拡大により、それらの流れに乗れなかった京都から、代表的な生産地は離れ変遷する
 → 奈良の僧坊酒(1500年代が全盛) 「諸白(もろはく)」 「三段仕込み」 「火入れ」(低温殺菌)
 → 伊丹・池田(1600年代中頃~1700年代中頃が全盛) 「三段仕込み」の改良 近衛家の庇護(ひご)のもとに造り酒屋が栄え、「伊丹諸白」は将軍家の御膳酒に  
 → 灘(1700年代中頃~) 樽廻船の登場 立地条件 水車精米 十水(とみず) 寒造り(丹波杜氏)  宮水   
 
 

 江戸時代には、日本最大の消費地となった江戸へ、様々な商品が上方から下っていきました。その下りものの代表が伊丹、灘のお酒(下り酒)でした。当時の京都の酒はこれらに圧倒され評価の低い下らないものでした。皮肉にも近衞家が伊丹の領主であったことから、高級酒として伊丹の酒「剣菱」が京都にも下り?珍重されました。

 
 結びに
 本日は日本酒の製造や歴史の概略についてお話しましたが。お酒には「日本酒と文化」「日本酒と経済」「京都の土倉、麹座」「伏見の酒」「現代の酒」「日本酒と銘柄」「酒飲み列伝」等々色々な視点からの楽しいお話もあります。またそれらを通じて歴史上の京都の姿も浮かび上がってきます。またの機会にお話ししたく存じます。
                               (理事 豊田 博一 )
 


 
 
第2部は「祇園祭・山鉾に描かれた動物たちを探そう」わくわく倶楽部・祇園祭研究会より植村 多賀子会員です。
 都草 わくわく俱楽部は、≪まち歩き調査≫ と ≪祇園祭研究会≫とふたつの活動で構成されています。
 

 その祇園祭研究会では、2017年9月より、「祇園祭検定問題集を作ろう」「祇園祭・山鉾に描かれた動物たちを探そう」の2大テーマを掲げ、部員全員で取り組んでおります。

 

 今回の研究発表会では「祇園祭・山鉾に描かれた動物たちを探そう」のテーマから経過報告、中間報告をさせていただきました。

 祇園祭の山鉾は、豪華な懸装品、錺金具等で飾られます。その中には多くの動物が描かれています。しかし、この動物について調査をしている研究者や動物に特化してまとめた書籍などを見たことがありません。そこで、祇園祭研究会で調べてみようという案が出されたのでした。当時の部員全員に山鉾を1基から3基を割り当て、書籍、現地調査、祇園祭に関する展示会資料等から、各自それぞれが調査していきました。

 
 調査は、山鉾の中に何匹の動物がいるかという総数を数えるのではなく、動物の種類を数えるものです。
その結果 全山鉾で144種類の動物が存在していることがわかりました。
内訳は、鳥類63 哺乳類35 空想動物17 昆虫16 魚類7 その他6 です。

(空想動物も調査の対象にしました。)

 最も動物の種類が多かった山鉾は長刀鉾で、他の山鉾と比べ群を抜いて多いということがわかりました。
1位長刀鉾103種類 2位孟宗山35種類 3位鶏鉾・鯉山18種類 でした。
そして、動物が描かれていない山鉾はひとつもなかったということもわかりました。 

 山鉾は、どうして動物を取り入れたのでしょう。

山鉾に動物の名前がつく山鉾、由来に動物が関連している山鉾、それらにはそれぞれその動物が存在していました。また 種類別では鳳凰が一番多かったです。

 
 鳳凰29 龍25 鶴17 麒麟16 中国由来の瑞祥とされる空想動物と縁起が良い動物の鶴が上位を占めました。これは町衆が、幸せへの願い祈りを込めてこれらの動物を多く取り入れたのではと思います。

 今後も新しく入部した会員とともに楽しく調査を進めて参ります。そして、山鉾ごとの担当者による発表ができればと思います。(会員 植村 多賀子)

(広報部 岸本 幸子)