活動内容

京都府立京都学・歴彩館 府民協働連続講座 第5回都草講演会 「京都に残された資料からみる-京都の即位式・大嘗祭-」(2019.11.17)

京都府立京都学・歴彩館府民協働連続講座 第5回都草講演会「京都に残された資料からみる-京都の即位式・大嘗祭-」(2019.11.17)

 

 今年は「令和元年」。立皇嗣の礼が行われる来年4月19日をもって、戦後2度目の一連の皇位継承儀礼が終了することになります。先日の14日から15日の未明に行われた大嘗祭後まもなくのお忙しい時期ではありしたが、宮廷文化研究家の吉野健一先生に、京都に残された資料をひもとき、京都で行なわれた即位礼と大嘗祭についてその歴史的経緯や意味についてお話いただきました。

                     宮廷文化研究家の吉野健一先生

 今年の皇位継承儀礼を振り返りますと、平成28年8月8日、当時の天皇陛下であった上皇陛下の「象徴としてのお勤めとしての天皇陛下のおことば」として生前退位の希望を強くにじませたお気持ちを表明されたことから始まりました。

 明治以降に作られた皇室典範の中には、そもそも「譲位」の規定がなかったため、様々な議論がありましたが、一代限りに限定した皇室典範特例法によって、それを受けて今年4月30日に天皇陛下の退位、翌5月1日の皇太子殿下の即位が皇室会議及び閣議決定で了承されました。

 今回の皇位継承については明治以降初めてのことも多く、よく知られた「譲位」(生前退位)による皇位継承のほか、新年号の事前公表、践祚・改元日の事前決定、「雨儀(雨天のもとでの儀式)」による即位式の実施、「皇太子」不在による秋篠宮殿下の立皇嗣があります。さらに退位した天皇を「上皇」(従来の太上天皇を略しての上皇とは異なる)、上皇の后を「上皇后」(皇太后としなかった)など、従来と異なる点も興味深いところです。

 このような中で平成4月31日、政府によって新年号が「令和」と発表されますが、新元号制定の経過の中で様々な動きがあったこと、新元号にはどうも6つの案があったこと、やはり元号のお話は吉野先生の特にご専門分野なのでよくご存知のところです。

それでも新元号の出典が『万葉集』という点には驚かれたそうですが、万葉仮名で綴られた歌そのものではなく、歌の説明の部分から引用されているとのことでした。

「梅花謌卅二首并序」

「于時、初春月、氣淑風、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」

 時に、初春の令月(れいげつ)にして、気淑(きよ)く風和らぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉(こ)を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かを)らす

 こうして5月1日、令和の時代がスタート。約半年後の10月22日にはご即位正殿の儀、11月14日から15日未明にかけて、新天皇として始めて行なわれる新嘗祭である「大嘗祭」が執り行われました。しかし、もともとは京都で行われていた皇位継承儀礼。

明治時代以降も明治天皇の意向で即位礼・大嘗祭とも京都で行うこととされ、旧皇室典範や登極令に基づいて、昭和度までは主要儀礼は京都で実施されていました。

 特に東京遷都後初となった大正の御大典では大規模な「奉送迎・奉拝・奉祝」が行われ、京都は大変な盛り上がりをみせました。京都駅から京都御所へ通じる「行幸通り」としての烏丸通をはじめ、御大典にあわせた道路拡張、鉄道の開通、駅舎、各地の社寺で新設や再建などが行われました。

 さらに大典関連事業も盛大で、大正御大典、昭和御大典ともに記念の博覧会が行われ、全国から多数の来場者が会場に集まりました。また即位礼や大嘗祭に使われた建物やその部材が、京都府下の地域や学校、寺院などに下賜され、醍醐寺、光照院、乙訓手ら、同志社をはじめ、地域神社の門や社務所として再利用されています。

 一方、新天皇がご即位正殿の儀で使用される高御座は、今でも京都御所から運ばれ、解体修理して使用されており、それが技術の継承という点からも大変大切な役目を果たしています。
平成度からは、即位礼や大嘗祭両儀式とも東京で行なわれることになり、今回もそれが踏襲されましたが、今一度、京都との深い関係も知っていただきたいところであります。

有職御人形司十二世 伊東久重氏所有 黄櫨染御袍

 また、最後になりましたが、今回の講演会に際して、有職御人形司 伊東久重氏が所有されている貴重な黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)をお貸し下さいました。近くて拝見すると、桐・竹・鳳凰・麒麟のおめでたい文様が入っているのがよくわかります。

平安時代以降の日本の天皇が重要な儀式の際に着用する束帯装束を会場に展示するという貴重な機会をいただきましたこと、この場を借りて御礼申し上げます。

(記事 松枝 しげ美)
(広報部 岸本 幸子)

 

活動内容
このページの先頭へ戻る

Copyright © MIYAKOGUSA All Rights Reserved.