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活動内容

第79回研究発表会報告、伊東 久重氏・深澤 光佐子会員(16.02.08)

2016.02.12

第79回研究発表会報告、伊東 久重氏・深澤 光佐子会員(16.02.08)

◆日 時:平成28年02月8日午後1時10分~午後4時00分
◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階
◆研究発表:1. 「御所人形の伝統 脈々と」 有職御人形司 伊東 久重氏
2.「山階宮晃親王の伝記の出版に際しての雑話あれこれ」深澤 光佐子会員
◆参加人数:44名
◆参加費 :500円 一般参加費 :700円

第1部の研究発表会は有職御人形司12世 伊東久重氏にご講演をしていただける事になりました。
京都御所一般公開の際に目にする生き生きとした宮中の女官、石山寺で源氏物語を執筆中の紫式部、
艶やかな衣装を身につけた愛らしい御所人形、祇園祭の鉾の上に祀られた天王人形や生き稚児に代
わって鉾にのる稚児人形・・・・。
これら全て、御所人形の伝統を伝える伊東家が代々携わってこられたお人形です。

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伊東家は、現在の四条烏丸付近で人形師の看板を掲げられ、3代目桝屋庄五郎が宮中出入りの人形師
として第117代後桜町天皇より「伊東久重」の名を頂かれました。江戸時代中期、明和年間の事です。
以来、代々一子相伝で、現在のご当主は12代目。後継にはご長男、衣装をご長女が担当され、家業を
守っておられます。
人形の材料となる桐の木は30年かけてしっかり乾燥させたものを使い、彫って形にしたその上に薄い
和紙を貼り、胡粉を塗って天日で乾燥させて、サンドペーパーで磨き上げる・・・この行程を何度も
何度も繰り返すことによってあの白い滑らかな肌のお人形になるのだそうです。
さらに人形に命を吹き込む重要な顔描きはもっとも神経を使われる作業で、あのやわらかい眉は200
回もの薄墨の重ね描きによってようやく生み出されていることが分かりました。

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逆にパッチリとした愛らしい目は、濃い墨で一気に描かれるのだそうで、一瞬たりとも気が抜けません。
このようにして作られた愛らしい稚児の姿の人形は宮廷や公家達の間で慶事に飾られるようになり、
参勤交代の大名への下賜品にも使用され、江戸や各藩に広がっていきました。
形や色、また用途から様々な呼び方が用いられていましたが、明治以降統一して「御所人形」と呼ば
れるようになりました。
伊東様は有職御人形司12世として新作の発表はもちろんのこと、江戸期の歴代作の修復にも力を注い
でおられます。
「12世 伊東久重」とは11人の伊東久重を背負うこと・・・、わずか27歳でこのような重い決断をさ
れたにもかかわらず、語り口は静かでどこまでも穏やかです。

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最後に伊東家の守り神である「草刈童子」と「和泉小次郎親衡人形」について語って下さいました。
いずれも初代がお作りになった人形です。
とくに「和泉小次郎親衡人形」は祇園祭の長刀鉾の鉾先に祀られる天王人形で、その伝説から小船を
かつぎ、右手には大長刀を持つ長刀鉾の守り神として大切にされてきました。
昭和60年、長刀鉾の鉾立中に起こった事故の際に、この大切な天王人形が壊れてしまいましたが、
翌年からは見事に復活した12世 伊東久重作の「和泉小次郎親衡」が祇園祭山鉾巡行の先頭を進んで、
祭りの無事を見守ってくれているのです。

                           (記事 松枝 しげ美)


 
 第2部は会員NO.49番 深澤光佐子会員です。以前に「門跡寺院・勧修寺の歴史について」、
「平安貴族の位階と職制のしくみ」についてのお話をしていただいています。
3回目の今回の発表は山階宮晃親王の伝記を出版されるに至った経緯や書籍を出版するにあたっての
苦労話などをお伺いいいたしました。
本のタイトルは『明治天皇が最も頼りにした山階宮晃親王』で深澤光佐子様は山階宮晃親王の玄孫にあたります。

尚、今回のレポートは深澤光佐子様ご本人より頂きました。

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 発表は2部立てになってます。
前半は、研究対象の人物である山階宮晃親王のことに始まり、その子孫3代にわたってどのような人が
いたかを系図を基に紹介させていただきました。
小さい頃の我が家の言葉遣いの習慣が、ちょっと世間とかけ離れていたことなども紹介してみました。
特に祖父にあたる筑波藤麿のことは、孫―祖父としての触れ合いを小さい頃のエピソードを交えて御話
しました。
祖父は、国史を大学で勉強して、晃親王の伝記を作ろうと企画して資料集めに奔走しているときに東京
大空襲が起こって総て灰燼に帰してしまったそうです。その想いを研究途中で知り、図らずも祖父の夢
を引き継いで完成させるという事になり、なんだか運命的なことを感じました。

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後半は出版社にどのようにアプローチをして出版にこぎつけたかとか、契約後編集者が次々と変わったり、
会社の都合でまったく事が進まない状態が半年以上あったことなどハラハラドキドキの時間を過ごしたこ
となどをお話ししました。
大勢の方のお力添えで何とか本を出す事が出来たのですが、特に能力の高い都草の方のお力を得られたこ
とは、とても心強かったです。都草にはいっていたことによってそのような出会いがあったことをとても
感謝しております。

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それと、読んでくださった方からの感想文はとても励みになっています。もしも、お読みいただいて、
感想文を書いてくださる方がありましたら、ぜひ!!楽しみにお待ちしています。
本の中にも書いたのですが、晃親王の揮毫された物がどこかにありましたら、ぜひご一報いただければ幸いです。

                            (記事 深澤 光佐子)

                            (広報部 岸本 幸子)