活動内容

第86回研究発表会報告、伴仲 啓良会員・岡田 英三郎会員(17.02.09)

第86回研究発表会報告、伴仲 啓良会員・岡田 英三郎会員(17.02.09)

◆日 時:平成29年02月09日午後1時10分~午後4時00分
◆場 所:ひとまち交流館 京都 2階
◆研究発表:1. 「京の仏像さまそれから その1・神護寺薬師如来立像」 伴仲 啓良会員
      2.紙はよみがえる その2-仏との接点「消息経」- 岡田 英三郎会員
◆参加人数:21名

第1部は伴仲 啓良会員より「神護寺 薬師如来立像」を熱く語っていただきました。
・心を動かされた発端⇒⇒⇒①闇に浮かび上がる異様な相!!  ②近寄りがたい霊気—何故にこのような霊気が?
・我が国香木No1「榧(かや)材」が使われたわけには理由がやはり存在する。

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・仏像には、明るい光が似合うものと、うす明かりの中で存在感を発揮するものがある。当像は、夜、灯明や
 蝋燭の光で拝した時、さらに強い印象を与える。
・当像は、厨子の中で、ただ立っているだけであるが、命あるもののように感じられる。顔からも体からも、
 近寄り難いほどの異様な気が発せられ、衣の端々が震動しているかのよう。
・木で造られたものでありながら、呼吸し、心臓が鼓動しているかのように感じられる。古今東西、これほどの
 気迫に満ちたエネルギッシュな如来像を無いのではないだろうか。この力の根源は、一体どこから来ているの
 だろうか。

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・当像の特徴⇒⇒⇒余りにも多くの特徴がある。体の正面で、両腿の間に小さなU字形の衣文、中心線が、像そ
 のものの軸線から外れ、傾いている。
・呪詛の像か?⇒⇒⇒①巫覡  道鏡の野望阻止、和気清麻呂 ②怨霊と化した道鏡からの攻撃、その恐怖 
 ③薬師如来に、身の安全を守ってほしい ④怨霊の攻撃を打破、強力パワー、迎撃力を原木からのパワーを、
 像に込めた? ⑤作者が意図した計画的なことでなく、何か不思議な大きな力に衝き動かされ、自然にそう
 なってしまった?

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 ⇒⇒⇒奇跡の造形?⇒⇒⇒彫刻力+巨樹の力=数百年の生命力
・神護寺 薬師如来立像は、以上の曰く付の像であるか?(会員 伴仲 啓良)


第2部は岡田 英三郎会員から「紙はよみがえるその2―仏との接点「消息経」―」です。
今回の研究発表は、私としては記念となる10回目である。紙に関しては3回目である。
今回のテーマとした「消息経」は極めてマニアックなテーマだったようで反省している。

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「消息経」とは、亡き人の消息(手紙)を利用して供養のために作った経をいう。
「消息経」には、①消息にそのまま罫線を引いて写経 ②消息の裏(紙背)に写経 
 ③消息を漉き返して料紙を作り写経した の三種がある。
 私にとって今回の発表に三つに思い入れがあった。
 一つは、『日本三代実録』「仁和二年(886)十月清和天皇女御藤原多美子薨去記事」です。

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この記事によると、藤原多美子が、清和天皇が入道されたときに日ごろいただいていた消息を漉き返して料紙を
作り、法華経を書写して供養したとあります。この記事は私が歴史における紙のリサイクルについて研究に入る
きっかけとなった。さらに、近年JR二条駅西側の発掘で、藤原多美子の父である藤原良相の邸宅が見つかった。
藤原多美子が幼少の頃ここで遊んでいただろうというロマンをお話しした。

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 二つめは、いずれも重要文化財となっている、京都国立博物館蔵の「後深草天皇宸翰消息」と妙蓮寺蔵の
「伏見天皇宸翰 法華経」が消息経と作成された表裏であり、ある時に二枚に剥がされて所蔵されていたことが
分かったこと。しかもこの事実が、鎌倉時代の二条作の日記『とわずがたり』に記載されていることを報告した。

 最後に、古代(近世までも)紙は貴重なもので、紙は燃やしてはいけないという不文律があったと思われる。
にもかかわらず、紫式部は『源氏物語』「幻の巻」において、光源氏が紫の上の手紙を焼く場面を描いている。
紫式部のような極めて深い教養をもった人が、なぜこのような場面を設定したのか深遠な課題と考えている。
以上  (会員 岡田 英三郎)
     (広報部 岸本 幸子)

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