活動内容

第83回研究発表会報告、大谷 芙美子会員・櫻井 英成会員(16.08.02)

第83回研究発表会報告、大谷 芙美子会員・櫻井 英成会員(16.08.02)

◆日 時:平成28年08月2日午後1時10分~午後4時00分

◆場 所:ひとまち交流館 京都 3階

◆研究発表:1.「狩野派と京狩野の絵師たち」 大谷 芙美子会員

      2.「町組改正と番組小学校~山鉾町に代々継承されてきた
             知られざる慣習を求めて~」櫻井 英成会員

◆参加人数:31名

 

第1部は大谷 芙美子会員より「狩野派と京狩野の絵師たち」です。
以前、都草の歴史探訪部会(東部)で聖護院御殿を訪問した折、私の説明担当が「聖護院御殿の襖絵について」
ということになり、「使者の間」など狩野永納筆といわれている襖絵のことを少し話しました。
その折、日本最初の本格的な画史「本朝画史」を著した京狩野三代目の狩野永納が、「狩野探幽は狩野派の
画風を一変させてしまった」との思いから当初の「本朝画伝」に探幽についての記述をしなかった・・
ということを織り込んだ説明をしましたところ、興味を示して下さる方が多かったものですから、今回、
狩野派の流れとその中にあっての京狩野の自負といったものを話させていただきました。

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狩野派は足利幕府八代将軍の御用絵師となった狩野正信を始祖としますが、その後400年近く日本画壇で
その権威を持ち続けた理由としては、正信の息子元信が、やまと絵と漢画(唐絵)とを融合させた画風を
狩野派様式と定め、その斬新な画法などを門弟たちに徹底させたことによって、一度に大量の画作注文が
あっても均質化した筆致で対応出来たこと、また、狩野派が禁裏・時の権力者・社寺などから、確実に注
文を得ることに心を砕いたことなどでしょうか。
狩野派の粉本主義と揶揄されることもありましたが、永徳・探幽などその時代を代表するような偉大な絵
師が出て桃山時代から江戸時代にかけて大きな足跡を残しました。

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しかし晩年には徐々に画風が変わった(永徳の大画、探幽の余白主義など)と言われるのには、限られた時
間内で時の権力者の注文にしっかりと応えねばならなかったためだったとも言われています。
江戸幕府となって、狩野派直系の絵師達が幕府の御用絵師として江戸へ移った時、永徳の一番の直弟子と自
負する狩野山楽は京都に残り、永徳の画風を代々継承していこうとする京狩野の濫觴となりました。
江戸狩野のように、幕府お抱えの絵師としての経済的基盤がない中で注文主の要望に応えたり、徐々に台頭
して来る町絵師たちの活躍に、ともすれば自分の画風に迷いつつも、その底流に流れる「永徳の画風を堅持
した山楽・山雪様式」を大きな柱とした京狩野の絵師たちの意地と心意気に思いを馳せたいものです。

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京都の社寺には狩野派の絵師たちが描いた障壁画が多く残っていますし、親しみをもって私の話を聴いて戴
けるのでは・・との思いから多くの障壁画を画面で見ていただきましたが、限られた時間に焦っての少々早
口且つ説明不足を反省しております。(会員 大谷 芙美子)


 

第2部は櫻井 英成会員から「町組改正と番組み小学校」です。

番組と云っても、お分かり頂けない場合が多いと思いますので、まず最初に京都の町組の変遷について簡単
に説明することに致します。その上で明治2年、小学校設置に際し、二度にわたり町組を改正し、京都の町
組に一小学校を基本構想とし六十四の小学校を設置しました。これを番組小学校と云います。

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明治五年の学区制の発布を前にして小学校設置の気運が高まり、のちに知事になられた槇村正直氏を始め
とする行政の協力を得てまた熱心な寄合衆に支えられたと云うものの、行政、寄合衆が三者一体となって
取り組み、蛤御門の変で焼け野原となった都の復興の最中(さなか)の出来事であるだけに、関係者と町衆
のエネルギーの凄さに驚き入る次第であります。

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尚、番組小学校の課業表を見ても、高学年で英語とドイツ語を教えると云う高度なもので、現在のカリキ
ュラムと比べても、遜色のない程度の高いものでありました。
また、明治5年に、福沢諭吉が番組小学校を視察にこられた時、「スクール・ディストリクト」にあたる
として絶賛されました。

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小学校の建設は半分を官が助成し、半分は市中の富豪の寄付と、学区内の一戸につき、半年に金一分(竈金)
を出させ、貸金の利息と合わせて、日常的な経費は町組の負担となっていました。私は、京の町衆のエネル
ギーがあればこそ番組小学校が出来たものと確信しています。(会員 櫻井 英成)

                            (広報部 岸本 幸子)

 

 

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